Touch the Heartstrings

心の琴線に触れる森羅万象を日々書き綴る「Touch the Heartstrings」

書のアート

書道家の「紫舟(ししゅう)」の「書」には意思がある。文字に感情を吹き込み、表情をつけられた「書」は「意思を表現する」手段になると信じ、彼女は書家を志した。

6歳より書道を始めた彼女は、小学生の頃には8段となった。大学卒業後は神戸のアパレルメーカーでOLとして働いていたが、3年目に退職し、書家に転身。京都や奈良で書を修行し、2001年7月に初めての個展を開いた。

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2003年に奈良にアトリエを構え、2005年には東京へ移転。書の作品展の他、テレビ番組や書籍などの題字、新聞・雑誌の連載などでも活躍。2007年にはショートショートフィルムフェスティバルの審査員も務めた。 2010年4月に大河ドラマ龍馬伝」の題字で話題になり、2011年には東日本大震災復興支援で行われたロックユニット「Complex」のライブテーマ「日本一心」の「書」を手掛けた。

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「書」を用い、文字をイメージ表現・表情・感情をつけ、情報としての文字に意思を吹き込む。そして、日本の伝統的な「書」を世界に通用する「意思を表現する」手段として世界を舞台に発信する。ちなみに、彼女の1つ夢は、ハリウッド映画の題字。

紫舟の展覧会「水滴々 人歩々(みずてきてき ひとてくてく)」展が、グッチ新宿3階イベントスペースで開催される。また、店舗ではスペシャルウィンドウも展開する。

テーマは水に対峙する日本の思想。日本の伝統的な「書を」、新しい技術で立体やアニメーションで表現するなど、常に革新的なクリエーションを行う書家として活躍する紫舟が、グッチのイメージにインスパイアされた黒龍の金屏風など本展初公開の作品が披露される。

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インタラクティブ・アニメーションの新作「瀧心図 (takikokorozu)」は、人が近づくと、さまざまな「心」のついた文字が現れては、瀧の映像に流されて消えていくという仕掛けが施されている。また、六曲屏風二隻に描かれた龍と書の大作など、「書」の伝統と革新を同時に体感できる内容の作品が初公開される。従来の「書」の概念を超えたクリエイションが体験できる。

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「瀧心図 」は、以前にも紹介したウルトラテクノロジスト集団「チームラボ」とのコラボ作品。そして、「チームラボ」とのコラボレーション作品が、青森県の十和田市現代美術館が開館5周年を記念して開催する「花」をテーマにした展覧会「flowers(フラワーズ)」にも出展される。

アート作品「生命は生命の力で生きている」は、空間に書く書「空書」。書の墨跡が持つ深さや速さ、力の強さのようなものを、「チームラボ」が新たな解釈で空間に立体的に再構築し、映像化した作品。期間は2013年4月27日から9月8日まで。

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また、紫舟と「チームラボ」のコラボは成田空港でも展開される。成田空港第1ターミナル南ウイング4階、出発ロビーGゾーン付近ウェイティングエリアにおいて、成田空港内に計100台設置されているデジタルサイネージ「スカイゲートビジョン」の中で最大となる凹型曲面有機ELパノラマビジョンを使用して、インタラクティブアニメーション「世界はこんなにもやさしく、うつくしい」が4月27日より体験できる。なお、国内空港で参加型デジタルアート作品の常設は初の試みである。

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「世界はこんなにもやさしく、うつくしい」は、2011年に発表され、アジア、南米、ヨーロッパ圏の計6ヶ国を巡回。欧州最大のバーチャルリアリティ博覧会「Laval Virtual」の国際コンテスト「ReVolution」では、「建築・芸術・文化賞」を受賞。イッカン・アート・ギャラリ―「エクスペリエンス・マシーン」の展示は、世界中のアート関連ニュースを配信しているオンライン情報誌「Artinfo」にて、国内で開催された美術展のベスト4に選ばれた。また、スイスのダボス会議や、ノーベル賞授賞式の関連公式行事「Nobel NightCap」にて作品が披露されている。

紫舟が描いた「書」が浮遊するように映し出され、その「書」に人の影に触れると、「書」がもつ意味に形が変化し、本来の姿へ具象化されて独自の世界を創っていく。そして、具象化されたものは世界の中で互いに影響する。鳥は木が好きだったり、雨が降っていると、土から芽がたくさん出たりする。世界は互いが関係し合い、常に全く新しい景色を創り続ける。つまり、映っている映像の裏側には空間があり、「書」から生まれた花や木、蝶や鳥などはその空間にある他のものの影響を受けながら、3D空間上でリアルタイムに計算されアニメーションとなる。

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「書」から生まれたいろいろなものたちは、空間上のそれぞれの位置や、関係性などによって、知能や物理的な影響で、複雑ながら自然なアニメーションとなり、自然界に同じ瞬間がないのと同じように、作品の瞬間瞬間は二度と見ることはできず、常に初めての景色を創り出す。

そして、「誰も観賞していない状態」「1人で観賞している状態」「複数人で観賞している状態」とで、見え方が変化するこの作品は、世界中の人々が日本から飛び立つ時に、「歴史」と「未来」、「文化」と「先端テクノロジー」が交錯する国として、旅を共にした人との最後の日本の思い出となること間違いない。

世界と日本が交わる成田空港で、日本は世界に誇る「長い歴史」の中で文化が培われ、そして、それは過去のことではなく、ちゃんと「未来」まで連続していく…。そんなメッセージを直感的に伝える仕掛けである。ちなみに、6時から22時までの毎時30分間上演される予定だ。