Touch the Heartstrings

心の琴線に触れる森羅万象を日々書き綴る「Touch the Heartstrings」

キース・へリング

昔、ミミというハイカラ?なニックネームの素敵な女友達がいた。本名はフジコちゃんと言って、いたって日本的な名前だったが、まさにルパン3世に登場する峰不二子(フジコちゃ~ん)のような、悪く言えば、キレイなフィリピン人のニューハーフのような女性だった。彼女は長い間ロスやニューヨークで暮らし、離婚を機に日本に帰ってきた。当時、私が住んでいたマンションの1階にあった喫茶店の常連客で、当然私たちはその店で知り合い、すぐに意気投合した。

アメリカでの彼女はユニークな交友関係があった。彼女の部屋を訪ねたとき、かなりポップなイラストが描かれた多くのアイテムを見せてくれたことを思い出す。その時はあまりピンとこなかったのだが、「キースと友達やねん」と何気に呟く彼女に、「誰?」と聞き返す。「キース・へリングっていうけっこう有名なアーチストで、彼からいろいろもらったのよ」と彼女。「ふ~ん…」無知とは恐ろしいものである。後に知ることになるキース・へリングの偉大さ…、彼女、そんな人と友達だったんだ…。

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ストリートアートの先駆者とも呼べる画家で、「アート」というものを媒体として頻繁に社会的な問題について言及し、大衆に大きな影響を与えた活動家でもあったキース・へリングは、アンディー・ウォーホルやバスキアなどと同様に、1980年代のアメリカ美術を代表するアーティスト。

1980年代初頭に、ニューヨークの地下鉄構内で使用されていない広告掲示板に黒い紙を張り、その上にチョークで絵を描くという通称「サブウェイ・ドローイング」というグラフィティー・アートの活動を始めた。そのシンプルな線でリズミカルに書かれた落書きのような絵はニューヨークの地下鉄の通勤客の間で評判となり、一躍キース・へリングの名が知られるようになった。

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ニューヨークの画商トニー・シャフラジの支持もあり、数回の個展を開催して知名度を上げたキース・へリングは、その後、ニューヨークのマンハッタン、シドニー、メルボルンリオデジャネイロアムステルダム、パリなどで壁画を製作するなど、公共空間での活動を多く行なった。ベルリンでは、ベルリンの壁の有名なチャーリー検問所の壁に絵を書いている。

また、タイムズ・スクエアのビルボードのアニメーションから、舞台デザイン、キースのグッズを販売するポップ・ショップをオープンするなど、制作活動は多岐に及んだ。

キース・へリングは1988年にはHIV感染と診断され、1990年31歳の若さで他界するまで、アート活動を通してHIV/AIDS予防啓発運動を初めとする社会的プロジェクトもにも最後まで積極的に関わった。エイズ関連組織に資金や画像を提供し、彼の慈善活動のための遺産が永久に続くことを目的とし、1989年にキースへリング財団を設立。作品を通じてAIDS感染を防ぐメッセージを出すなどし、「Act Against AIDS(AAA)」最初のポスターを描いた。

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死後も大きな影響を持ち、今なおキース・ヘリングの作品は様々なアイテムの中で登場する。ファッションでもカステルバジャックなど様々なブランドのデザインに影響を与えたほか、スウォッチやユニクロとのコラボでアイテムが発表されている。ちなみおに、2012年5月4日は、キースの生誕54年を記念して「Google」のホームページのロゴが「キース・ヘリング」バージョンとなった。

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今年の2月には、リーボックからキース・ヘリングと初のコラボレーションモデルが限定発売され、話題になった。歴代の名作を復刻している「リーボック クラシック」ラインの中でも人気のフットウエア「クラシックレザー」「クラシックレザー ミッド」「ワークアウト プラス」「フリースタイル」に、キース・ヘリングの人気作品「Everyman」「Barking Dog」「Radiant Baby」のデザインが取り入れられている。

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コラボレーションモデル第1弾として、「クラシックレザー」「クラシックレザーミッド」の2モデルが登場。贅沢な素材や大胆なデザイン、色使いを用い、キース・ヘリング作品の特徴である斬新でエネルギーあふれる感覚が表現されている。足元にアートを感じるスニーカー。なかなかステキだ。

もう20数年会っていないミミ。元気で暮らしているのだろうか。