Touch the Heartstrings

心の琴線に触れる森羅万象を日々書き綴る「Touch the Heartstrings」

ゲイリー・ウィノグランド

「スナップショット・エステティック(美学的スナップ写真)」は、スナップ写真において芸術写真に位置づけられる作品の総称。

スナップショットは、日常の中の光景等を瞬間的に切り取ったものである。「スナップショット・エステティック」の初期の理論家としてオーストリアの建築批評家ジョゼフ・アウグスト・ルクスの存在が大きい。ルクスは1908年に「コダックの芸術的秘術」という書籍を上梓し、同書のなかで、コダックの廉価版写真機「ブローニー」を使用することを擁護した。カトリック的近代批評に影響を受けた立場に導かれ、写真機を使用することの気楽さは、人々が自分たちの周囲や生産したものを撮影・記録することができることを意味すると論じ、ルクスの望むものは現代世界の潮の満ち引きにおける安定性の1つの典型であった。

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「ブローニー」の登場した1900年以降、写真機の小型・軽量化は急速に進み、ドイツのカメラメーカー「ライカ」が生んだ「L型ライカ」や「M型ライカ」は、写真機と写真術の普及、スナップ写真の向上に寄与した。報道の分野にも積極的に使用され、アンリ・カルティエ=ブレッソン木村伊兵衛らは「スナップ・ショットの名手」と呼ばれた。

ヴァルター・ベンヤミンによる「複製技術時代の芸術」によれば、「複製可能性」と「技巧の不在」が写真の本質であり、そうであるならばもっとも芸術から遠いとみなされ、誰でも容易に撮影可能なスナップ写真にこそ、写真の本質的な可能性が宿るはずだとするのが「スナップショット・エステティック」の考え方である。

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