Touch the Heartstrings

心の琴線に触れる森羅万象を日々書き綴る「Touch the Heartstrings」

ガシャポン

小型自販機に硬貨を入れてレバーを回すと球体のカプセルに入った玩具が出てくる。このカプセルトイに夢中になった幼い頃が懐かしく思い出される。そう、確かにあの頃のカプセルトイには夢があった。

もともとカプセル自販機自体はアメリカで考案されたものであり、球体ガムの販売機がその主とされている。しかし、現在まで「カプセル自動販売機」としての商品は販売はされていない。日本には1965年に輸入され、1970年代に全国各地に広まった。

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1965年、おもちゃのバイヤーとして日本に来ていたスタンレー・シャーレットが広瀬久照に「カプセル自動販売機を日本に広めないか?」と声をかけ、共同で有限会社「Value Merchandise」を設立し、まだカプセル自販機がなかった日本で浅草に1号機を設置、その後、当時ブームとなっていたボウリング場などからも設置依頼がきて全国的に普及したという。

参入するメーカーも増えていき、オリジナル玩具に加えて版権キャラクターものも投入されるようになるとますます普及していった。カプセルトイは様々な会社が販売しているが、「ガシャポン」という名称の認知度が高い。「ガシャポン」は、「バンダイ」の玩具名ないし、その販売方式で、商標登録されているカプセルトイの名称である。ちなみに、「ガチャンコステーション」は「タカラトミーアーツ」が登録している。

また、セブン-イレブンの店頭で、自動販売機は使わず、「ガチャボックス」として「中の見えない色つきカプセル」に封入し、手売り販売しているケースもあるが「ガチャボックス」自体は玩具メーカー5社が共同で行っている販売方法で、「バンダイ」特有の販売形式ではない。

「バンダイ」がカプセルトイ市場へ参入したのは1977年。封入されている玩具は、かつては幼稚園から小学校低学年の子供を対象とした物が主たるものであり、たとえば、流行している消しゴムなどが入れられる場合、「スーパーカー消しゴム」「怪獣消しゴム」「キン肉マン消しゴム(通称:キン消し)」「SDガンダム消しゴム(通称:ガン消し)」「力士消しゴム」などが作られた。

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使用される素材は、「ダイキャスト」→「プラスチック」→「塩ビ/ PVC」の推移で変更しているが、その時代の低コスト素材を使っているという台所事情も現してもいる。

ガシャポン」自体を現在の知名度に押し上げた代表的な商品に「HGシリーズ」がある。1994年のウルトラマンを皮切りに販売が開始され、200円とは思えない「造形」「彩色」で話題となり、子供のみならず大人も巻き込みヒットした。その後、ガンダムや仮面ライダーシリーズをはじめ、ドラゴンボール、スーパーロボットゴジラ、その後、セーラームーンポケモンなど数々のシリーズを展開する大ヒット商品となった。また、俗にいうオタク向け商品なども増えていく。後にブランド名を「HGIF」や「HGCORE」「DGシリーズ」などに変更し継続されていった。

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これらの玩具は、その販売形態の性質上、自ら商品を選んで購入することが出来ず、重複したものを他人と交換してすべて揃えるという方法を用いることから、同様に中身を選ぶことが出来ない食玩などと合わせて「トレーディングトイ」「トレーディングフィギュア」などと呼ばれることもある。

余談ながら、2006年には「バンダイ」が「エポック社」のカプセル及びカード自動販売機について、特許権侵害で提訴。その後、2007年に特許の侵害が認められ、製造・販売の禁止と損害額の支払いが命じられている。2008年5月に「エポック社」の上告が棄却され、「バンダイ」側の勝訴が確定した。

また、2008年には、カプセル誤飲事件を受け、カプセル自体に「穴を複数あける」「注意を促す刻印をカプセルに施す」「直径31.8mm以下のカプセルを使用しない」などの基準見直しと共に、環境資源も考慮した「50Φカラーカプセル」を多用しはじめている。

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どのカプセルトイメーカーの自販機は、基本的に自販機本体のコイン投入部に硬貨を投入し、レバーを回転させることで商品を取り出すものであり、使用する硬貨の種類や枚数によって10円用、100円用、200円用、500円用などの種類があり、封入されている商品の価格に合わせた機種が用いられる。なお、硬貨ではなく別売の専用メダルを用いるものもある。

1990年代後半以降から、子供だけでなくより上の年齢層にも販路が広がり品質も上昇した。ただ、高品質な分、価格も若干上がったことは否めない。マンガ・アニメ・ゲームを題材にした俗にいうオタク向けなマニアックな商品が多いが、それ以外にも従来のような子供向けオリジナル玩具はもちろん、リアルなものからシュールなものまで、幅広く多種多様な商品が世に溢れた。

2000年代以降は、カプセル自販機のみを数十あるいは百台以上並べた専門店が登場したり、観光地や特定地域向けに設置されたカプセル自販機でご当地限定グッズを扱う場合もある。ユニークな設置例としては、和歌山電鐵の「おもちゃ電車」では鉄道車両の車内に、また、西日本鉄道の観光向け循環バス「ぐりーん」ではバス車内にカプセル自販機を設置している。

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そして、「バンダイ」の新たな試みとして、カプセルに歌舞伎の人気演目で使用される隈取や衣裳、小道具がモチーフになったオリジナル柄ハンカチが封入された「ガシャポン」を先日リニューアルされた銀座の「歌舞伎座」に設置する。商品は歌舞伎公演を主催する松竹株式会社の企画・監修による、オリジナルデザインとなっており、「義経千本桜」に登場する鳥居前忠信や、「御所桜堀川夜討」の弁慶上使、「壽曽我対面」の五郎、十郎、「菅原伝授手習鑑」の松王丸、「菅原伝授手習鑑」の梅王丸、「菅原伝授手習鑑」の桜丸の全6種類。

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メインターゲットとなるのは歌舞伎ファンの50代~60代の女性で、今まで「ガシャポン」に触れたことのない、新たな客層を開拓するユニークな試みだ。

個性的な和柄ハンカチとして実用性もある「歌舞伎ハンカチーフ」は、銀座「歌舞伎座」で4月27日から先行販売されるが、5月下旬よりその他の「歌舞伎座」や「新橋演舞場」、「シネマ歌舞伎」を上映するMOVIXなどの歌舞伎関連施設で順次発売予定。1カプセル1個入り、1回300円。

初老のオバサマたちが「ガシャポン」のレバーを回している姿を想像すると、何となく微笑ましい光景に思えてくる。

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