Touch the Heartstrings

心の琴線に触れる森羅万象を日々書き綴る「Touch the Heartstrings」

カリフォルニア・モダン

20世紀初頭から多くの移民を受け入れてきたカリフォルニアは、第二次世界大戦後、世界一の経済力を誇る大国アメリカの大衆文化の中心として飛躍的な発展を遂げた。

急激な人口の増加によって、建築や生活空間のデザインの需要が生じたカリフォルニアでは、戦争に際して開発された新技術・新素材を有効活用し、大胆で実験的な独自のデザイン活動が展開された。カリフォルニアの温暖な気候や楽観主義的な風土、そして、アジア、メキシコに近いという立地から、開放性や鮮烈な色彩を特徴とする気楽で快適な新しい生活様式の実現に向けられた「カリフォルニア・デザイン」の典型が誕生した。

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そして、それらはアメリカ国内のみならず、ハリウッド映画などのメディアを通して世界中に伝えられ、強い影響力を及ぼすに至り、実現可能な夢の生活のシンボルとなっていった。しかし、20世紀デザイン史において重要な役割を果たしたにもかかわらず、「カリフォルニア・モダン」は、これまで十分に紹介されてこなかった。

先月から国立新美術館で開催されている「カリフォルニア・デザイン 1930-1965 ―モダン・リヴィングの起源―」展は、20世紀の半ば、とりわけ「ミッド・センチュリー」と呼ばれた時代にカリフォルニアで展開されたモダン・デザインをテーマとした大規模な展覧会である。「カリフォルニア・モダン」の全貌を、家具やファッション、陶芸、グラフィック、建築写真、映像など約250点の作品が展示されている。

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1920年代の好景気時、カリフォルニアでは急激な人口増加に伴い、住宅や家具への需要が爆発的に高まった。時代や地域にふさわしい新たなデザインが待望された中で、その地歩を固めたのは、R・M・シンドラーやケム・ウェーバーをはじめとする、モダン・デザインの最前線の環境で教育を受けた、ヨーロッパからの移住者たちだった。彼らの教訓は、西海岸で営まれる生活と結び付き、カリフォルニア独自のデザインが誕生することになった。

第二次世界大戦をきっかけとして、航空機産業の一大拠点となったカリフォルニアでは、軍事目的で開発された素材や技術の新たな利用手段が模索された。日用品の大量生産を可能とした「FRP(繊維強化プラスティック)」や成型合板を活用した、チャールズ&レイ・イームズの取り組みはその最たるものと言える。こうした新たな実験精神と、とりわけ工芸の世界で職人たちに重んじられた伝統が共存し、地域に根差したモダン・デザインが展開されていった。

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そして、カリフォルニアで活動するデザイナーが目標としたのは、安価で優れたデザインの住宅や家具を数多くの住民の手に届けることだった。デザインの自律性が強調されたヨーロッパとは異なり、日々の生活の中での実用性が重んじられたカリフォルニアでは、西海岸の温和な気候や開放的な環境に応じて、屋内と屋外の境界が曖昧な住宅やファッション、そして、気楽で快適な生活を営むための機能に富んだ家具が次々と生み出された。

豊かで快適な生活、いわゆる「グッド・ライフ」の典型として「カリフォルニア・モダン」が普及していく中で、絶大な影響力を誇ったのが、雑誌や新聞、そして、映画といったメディアの存在だ。カリフォルニア発祥の著名な雑誌「アーツ&アーキテクチャー」に掲載されたバラエティに富んだ試みの数々は、今日のデザイン史においても画期的な出来事として広く知られている。建築写真、家具やファッションの広告などが様々なメディアを通じて、そして、ハリウッド映画の絶大な影響力もあり、カリフォルニア・デザインの革新性は世界中に広まった。

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今回の展覧会では、チャールズ&レイ・イームズやR・M・シンドラーといった著名なデザイナーの作品を実見する格好の機会である。また、当時のテレビCMやハリウッド映画に加え、展覧会の開催に先駆けて試みられた出品作家へのインタビューなど、貴重な映像の数々が展覧会に色を添えている。しかし、何と言っても、家具やファッション、グラフィック、陶芸、ジュエリー、建築写真、そして、車やサーフボードなども含め約250点もの様々なジャンルの作品を収集した規模の大きさに注目。

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ちなみに、展覧会を多角的な視野から捉える機会として、カリフォルニアやモダン・デザインに関わる様々な分野からの専門家を招いた講演会やワークショップ等、各種イべントの開催も予定されている。期間は6月3日まで開催されている。

きっと古き佳き時代のカリフォルニアの匂いが肌で感じられること間違いない。