ロエベ
「石の上にも三年」という諺がある。「三年すわり続ければ暖まる」ということから、辛くても我慢して続ければ必ず成功する。 また、辛抱強く根気よく勤めることが大切、という意味だ。2010年2月15日から休むことなく続けてきた「日々雑感」が三周年を迎えた。
この三年間、別に辛いとも思わなかったし、また、特別の思いを込めて始めた訳でもないので、何かに成功したとは到底思えない。また、達成感も感じない。文章を紡ぐ作業を通して、日々何気に思う事や心の琴線に触れる事柄を再確認したに過ぎない。ただ毎日文字を書き綴る。究極の自己満足である。
まる1年が過ぎたあたりから「休むものか!」という、変な意地のようなものが芽生えてきたことは事実。そして、頭の中には「継続は力」という魅力的な言葉が浮かんでくる。
2年を過ぎると、もう習慣となる。自身のサイト以外で3つのブログにも掲載を開始し、少なくとも毎日数百人の方が拙い文章を読んでくれている。そう思うと何だか有難いような気恥しい感覚である。何事にも飽き性の性格を少しでも矯正しようという気持ちと、50代も半ばを過ぎたのである意味「ボケ防止」の目的も加わり、何となく区切りの三年目を迎えることになった。
何の区切りかはよく分からないが、取りあえず三年という数字は個人的には「よくやった」と思える数字であり、それも「休まず」ということに意味がある。しかし、自分の中では多少マンネリ化している感は否めない。
そこで、もう一度最初から始めてみようと考え、三年間の「日々雑感」をすべて削除し、新しいタイトルでスタートすることにした。タイトルの「Touch the Heartstrings」は、個人的に心の琴線に触れるいろんなことについて日々書き綴るという内容にピッタリのタイトルだと自負している。拙い文章で申し訳ないが、これから次の三年を目指し、小さな努力を継続する所存。お暇な方はお付き合い願いたい。冒頭の挨拶はここまで。
遠い昔、母の誕生日に「ロエベ(Loewe)」のブレスレットをプレゼントしたことがある。ロエベは皮革製品で有名なスペインのブランドだが、ブレスレットはワインカラーのエナメル仕様だったように記憶している。そんなに高価なモノではなかったが、母は気に入ってくれて毎日のようにしてくれていた。今では懐かしい思い出だ。
「ロエベ」は、19世紀中ごろドイツ生まれの皮革職人のエンリケ・ロエベ・ロスバーグが皮革製品の大国、スペインへ行き、シルクのような上質の革と出合ったことに始まる。マドリード市内のロボ通りで数人のスペイン人職人によって、レザーケースやバッグ、財布や煙草入れといったレザー製品のみを扱う皮革工房を見学したエンリケ・ロエベは、職人達の技術、そして、素材や品質の高さに感銘を受け、パートナーとして工房で働く事になった。
そして、彼らの手掛ける製品がマドリードの貴族達を魅了するようになり、それにともなって工房の規模も徐々に大きくなり、1892年には、当時マドリード市内の流行の発信地として名の通っていたプリンシペ通りにて、店舗併設型の工房であるE.ロエベブティックをオープンさせた。
1905年には、当時有力な顧客であったコンキスタ公爵夫人によってスペイン王室に紹介され、高品質でオリジナリティ溢れる「ロエベ」の製品が高く評価された事により、アルフォンソ13世から王室御用達の称号を授かった。スペイン王室御用達となった「ロエベ」は、良質な革、Lの文字のモノグラムで有名となる。また、素材の品質へのこだわりが強く、超高品質な革製品を使用。仔羊皮をなめしたナッパ素材を使用し、実際に使用するのはわずか数パーセントほどだと言う。
この頃より国内での事業拡大を始めるようになり、バルセロナでの2号店オープンを皮切りに、国内主要都市にて続々と店舗をオープンし、それに伴った各所からの注文増にあわせ、1949年には主要工場も建設した。
1939年には、マドリードのビジネスの中心地でもあったグラン・ビア8番地にて、半円形のショーウインドウが特徴的なグラン・ビア店をオープン。ブティックの建設には、高名な建築家であるフランシスコ・フェレ・パルトロメが携わり、半円形のショーウインドウは、店先の通行人の目から店内をカモフラージュする効果があり、このような造りが「ラグジュアリー」「洗練」といった「ロエベ」のイメージを一層強めた。
また、1950年代からは、ヨーロッパを中心に様々な国の貴族が「ロエベ」に訪れるようになり、グラン・ビア店のゲストブックには、当時のモナコ王妃であったグレース・ケリーなどといった名高い貴族の名が記されるようになった。
1959年にはマドリード市内のセラーノ通りに床面積900平方メートルのブティックがオープン。この店舗の建設にはスペインでも最も権威のある建築家であるハビエル・カルバハルが携わっており、当時のスペインでは馴染みの薄かったスカンジナビアスタイルと呼ばれる内装と外装にコントラストを効かせた店舗コンセプトが、アバンギャルドなブランドといった新たな「ロエベ」の評価を得るきっかけとなった。
その後、1980年代にはチェザーレファブリを中心にプレタポルテがスタート。1985年には「ルイ・ヴィトン」社と提携し、1996年には「LVMH」の傘下に入り、それまでの上流階級に多くの支持を得るブランドイメージから中流階級にまで多くの支持を得るブランドになった。そして、現在はレザー製品とプレタポルテの2分野を中心に事業展開を進めている。
2013年、「ロエベ」は、スペインが誇る最高の職人たちにオマージュを捧げる最新プロジェクト「ベスト・ハンズ・オブ・スペイン(Best Hands of Spain)」をスタート。伝統的なスペインの職人技を継承するブランドとのコラボによる、「ハンドクラフト・アニマル」「ショール」「フットウェア」「扇子」が発売される。
「ハンドクラフト・アニマル」は、マドリードのヘタフェにある「ロエベ」の自社工場で製造されたもので、職人たちがバッグを作った後に余ったカーフレザーの切れ端を折ったり、畳んだり、糊で留めたりして小さな動物をつくりあげたことがきっかけで誕生したという。
また、「ロエベ」がコレクションにスペインの装飾を取り入れ始めた1990年代からコラボを行っている「カレーラ・イグレシアス」は、裁断から刺繍、フリンジの編み込みまですべて手作業によって行い、2人の職人が4ヶ月かけて作るというショール「マントン・デ・マニラ」を制作。
そして、ロープソールをファッショナブルなフットウェアとして蘇らせたブランド「カスタニエール」とのコラボによるエスパドリーユは、ウィメンズ8色、メンズ4色。アッパー部分の素材は、ナパ、オーストリッチで、「ロエベ」のシグネチャーマテリアルである「オロ」スエードが使用されている。
1860年創業の扇子ブランド「カルボネル」が手がける「スパニッシュ・バロック」は、黒檀の中骨1本ごとに丹念に手彫りで施されたモチーフが特徴。「ロエベ」の代名詞でもあるナパレザーのケース付。
これらのコラボアイテムは、2月からマドリードにある「ロエベ」のグランヴィア店とバルセロナのガレリア・ロエベで開催される企画展の題材になるもの。同展はその後、アジア数か国を巡回。ロエベブティックのウィンドウでも展開し、3月からロエベブティックでも販売されることになっている。
余談ながら、「ロエベ」の2013年春夏広告キャンペーンには、女優のペネロペ・クルスが起用されている。新作コレクションに身を包んだ彼女が演じるのは、その高い教養と自由奔放な精神で数々のシュールレアリストたちを魅了し、ダリの夫人でもあったガラ。
フォトグラファーは、「ロエベ」の広告キャンペーンを手掛けて5シーズン目となるマート・アラスとマーカス・ピゴー。撮影はスペイン・マドリードのビジャフランカにあるパラシオ・マルケスの優美なバロック装飾をバックに行われた。
2010年7月に旧知の仲であったスペイン人俳優のハビエル・バルデムと結婚し、現在は1児のママのペネロペ・クルス。ブロードウェイ・ミュージカルを映画化した「NINE」で、主人公グイドの愛人カルラを演じた、まだ独身だった頃の彼女の妖艶な姿態が思い出される。