Touch the Heartstrings

心の琴線に触れる森羅万象を日々書き綴る「Touch the Heartstrings」

ウィリアム・ケントリッジ

京都市一般社団法人京都経済同友会」をはじめとする経済界、京都府と緊密に協働し、2015年春に現代芸術の大規模な国際展「PARASOPHIA:京都国際現代芸術祭2015」を開催する。そして、開催1年前のプレイベントとして、2014年2月8日から3月16日まで、南アフリカの美術家ウィリアム・ケントリッジの大規模な映像インスタレーション「時間の抵抗」を展示公開することが決定した。

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現在ヨハネスブルグ在住のウィリアム・ケントリッジは、1955年南アフリカ共和国生まれ。1980年代末から、「動くドローイング」とも呼べるアニメーションフィルムを制作。木炭とパステルで描いたドローイングを部分的に描き直しながら、その変化を1コマ毎に撮影する気の遠くなる作業により、絶えず流動し変化するドローイングを記録することで生まれる彼の作品は、独特の物語性と共に集積された行為と時間を感じさせる重厚な表現となっている。

ケントリッジの作品は、南アフリカの歴史と社会状況を色濃く反映しており、自国のアパルトヘイトの歴史を痛みと共に語る初期作品は脱西欧中心主義を訴えるポストコロニアル批評と共鳴する美術的実践として、1995年の「ヨハネスブルグビエンナーレ」や1997年の「ドクメンタ10」などを契機に世界中から大きな注目を集めるようになった。

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しかし、その政治的外見の奥で状況に抗する個人の善意と挫折、庇護と抑圧の両義性、分断された自我とその再統合の不可能性などの近代の人間が直面してきた普遍的な問題を、彼の作品が執拗に検証し語り続けていることは注目される。「石器時代の映画制作」と自称する素朴な制作技法に固執しながら、ケントリッジは近代の物語生成の原点を、そして、ヨーロッパ植民地主義の病理の原点を作品を通じて探求する。

精緻なセル画アニメやCGが主流である現代のアニメーション制作の状況の中で、ケントリッジの素朴な技法は対極に位置するが、強靱な知性に支えられた力強い表現は、ドローイングのコマ撮りアニメーションが未だに有力な表現手法となり得ることを証明しており、1990年代中頃からその作品は世界中の若い世代の美術家たちに大きな影響を与え続けている。

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