ミヒャエル・ボレマンス
1月11日から3月30日までの期間、原美術館ではベルギーを代表する現代美術作家ミヒャエル・ボレマンスの日本の美術館における初個展「アドバンテージ/The Advantage」が開催される。
ミヒャエル・ボレマンスは、かつて原美術館を訪れた際、館の建築の歴史と佇まいに胸を打たれて以来、この場所で個展を開くという想いを温めてきたという。かつて、原家の住まいとして家族が憩い、大戦を乗り越え、今は美術館として静かに生き続ける建築物に自身の作品に似た時空を認めた。
ベルギーのゲントを拠点に活動するボレマンスは、30代に入った1990年代半ば、それまでの写真による表現から絵画へと転向し、急速に評価の高まった作家。ベラスケスやマネなど近世・近代絵画の描写に倣い、自国のシュルレアリスムの遺伝子も受け継ぐと評されるボレマンス。彼の絵画には、静けさの中に微かに謎めいた気配が漂い、観る者を深い思索へと誘う。時間的・空間的に現実から隔離され、自身の儀式や作業にただただ勤しむ人々を通し、複雑で不透明な現代社会に生きる人間を、人間の宿命のようなものをボレマンスは描き出す。
ボレマンスの作品は具象画であるため、一見わかりやすい絵画のようでありながら、イメージは巧妙に理論化を避け、謎めいている。観る者に解釈が委ねられた、意味の開かれた作品といえる。また、ボレマンスの作品の特徴として、カンヴァスサイズが5号程度の小品が多く、カンヴァスの下地には白ではなくベージュ等を使う場合が多い。そして、地色を活かすため油絵具は薄塗りである。同じモチーフで複数枚描かれることもあり、制作数は少なくないが、あまりに作品と厳しく向き合うため完成作として世に出す数は圧倒的に少ないことでも知られている。
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