Touch the Heartstrings

心の琴線に触れる森羅万象を日々書き綴る「Touch the Heartstrings」

アメリカン・ポップアート

ポップアートとは、1960年代に盛んになった大量生産・大量消費の大衆文化を主題とする一連の芸術動向を指す。この語が最初に登場したのは1950年半ばのイギリスにおいてであり、戦後間もなく米軍兵士らと共に持ち込まれたアメリカの雑誌の切り抜きで作られたコラージュなどが制作されるようになったことがきっかけという。

第二次世界大戦後の疲弊したイギリスに豊かなアメリカから急速に浸透し、若者を夢中にさせていた広告やSFや漫画や大衆音楽などのアメリカ大衆文化に対する皮肉で客観的な目もあったが、これらを敵とするよりはむしろ現代を見直す新しい素材を提供するものとしてどんどん活用しようという発想が誕生。「ポップアート」という言葉は、商業デザインなどを指して「ポピュラーなアート」という意味で使用されたことに始まる。そして、身の回りにある大量生産の商品やそれらに囲まれた日常生活を題材とした作品が次々に生み出された。

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実際にポップアートが盛んになったのは、ポップの元となる商品や大衆文化の発信地である1960年代のアメリカで、特にニューヨーク。戦後のイギリス人にとっては、戦後の日本人と同様にアメリカのカッコいい商品や大衆文化は眩しいものだったが、当のアメリカ人にとってはどこにでも売っているただの日用品で日常風景の一部であり、むしろ格好悪い物であった。ただ、当初はそれを美術に直接使うことは、アメリカ芸術の前衛にあったモダニズムの立場や保守的な観衆から思わぬ強い反発を受けた。

ニューヨークでは1950年代以来、抽象表現主義が全盛を極めており、人間より大きなキャンバスに色彩を展開させ、始めも終わりもない抽象的な色面で全面を覆うオールオーバーな絵画が主流を占めていた。より平面的で、より壮大で崇高な絵画を目指した彼ら抽象表現主義の人々は、モダニズムを信奉する立場であり、「グッド・デザイン」を規範とし、大衆文化を芸術の前進する方向とは逆らう「キッチュ」として退けていた。

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