Touch the Heartstrings

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リニューアルラッシュ

世界でも有数の大ターミナル新宿駅の周辺エリアでは、大型商業施設の改装が相次いでいる。3月6日には2012年6月より行ってきた大規模改装を終えた伊勢丹新宿本店がグランドオープンした。

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婦人服と婦人雑貨フロアを中心に、およそ100億円を投じて大規模なリニューアルのコンセプトは「世界最高のファッションミュージアム」。東京の「旬」を提案する本館2階には東京のデザイナーズブランドやリアルクローズを集める「TOKYOクローゼット」や「イセタンガール」、通勤スタイルをミックスコーディネートで提案する新コンセプトショップ「メゾン トゥモローランド」が新設された。

また、プロモーションスペース「パーク」には、東京カルチャーを発信する「TOKYO解放区」「代官山蔦屋書店」とコラボレーション売り場を展開する「DECADE(ディケイド)」、青山「Sky High(スカイハイ)」がプロデュースするジュースバーが設置。

本館3階の「パーク」には、「Comme des Garcons POCKET(コム デ ギャルソン ポケット)」や1年限定ショップ「LESPACE Maison Martin Margiela(レスパス メゾン マルタン マルジェラ)」、そして「ローズベーカリー」の小型店舗が出店し、本館4階には「SAINT LAURENT(サンローラン)」「TOM FORD(トム・フォード)」などのハイエンドブランドを集積したゾーン「インターナショナルラグジュアリー」がオープンする。そして、店内の各所には66台のデジタルサイネージを設置し、トイレや駐車場なども改装された。

今回はフロアのリニューアルだけではなく、正面玄関を80年前の開店時の姿に甦らせた。1933年に新宿に進出した伊勢丹新宿店は、当時2層吹き抜けの正面玄関を新店舗の顔として設置。吹き抜けの天井よりシャンデリア、左右の壁面にブラケットを設置することで、荘厳な雰囲気をたたえていたが、戦時中の1941年頃に金属類回収令により、シャンデリア、ブラケットなどを撤去、供出することとなった。

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今回の復元は、開店当時の「百貨店=憧れの存在」再現の思いを込めつつ、「世界最高のファッションストア」にふさわしく、歴史的価値ある建築物として「街のランドマーク」であり続けたいという伊勢丹新宿店の強い気持ちから実現した。

新たな伊勢丹の顔となるキーヴィジュアルは、ファッション誌や東京コレクションなどで活躍するモデルのMona。ビジュアルは、現代美術家の名和晃平が彼女を3Dスキャンし、120%に拡大して作り出したマネキンにMona自身が抱き着いているというもの。撮影は京都宇治川沿いにある名和のスタジオ「サンドイッチ(SANDWICH)」にて行われ、写真は篠山紀信が担当した。その他、スタイリングは雑誌「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」編集長の田中杏子、ヘアー&メイクはジュンヤ ワタナベやアンダーカバーのパリコレを担当している加茂克也と、一流クリエーター達が関わっている。また、メインビジュアルのコンセプトメイキングはクリエーティブディレクターの後藤繁雄によるもの。

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そして、伊勢丹新宿店のオリジナルイメージ楽曲も30年ぶりにリニューアルされた。コンセプトである「ファッションミュージアム」にふさわしく、五感だけでなく第六感にも響くような曲を願い、日本のみならずワールドワイドに活躍する音楽家の坂本龍一に楽曲制作を依頼。出来上がった坂本オリジナル楽曲タイトルは「ミュージック フォー ファッションミュージアム(Music for Fashion Museum)」。リニューアルオープンの日から同店の開店時及びBGMとして店内で流れている。

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また、3月6日には米国発のスペシャリティストアで伊勢丹の子会社として日本に上陸した「バーニーズニューヨーク」も、1号店の新宿店を開店以来出店23年目で初めての大規模改装を実施し、リニューアルオープンした。ちなみに、リニューアルオープンセレモニーイベントでは、神田うのが白馬の馬車に乗って登場。全国の「バーニーズ ニューヨーク」から集結したイケメンドアマンらとともにテープカットを行い、日本1号店の新装を華やかに祝った。

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大規模リニューアル第1弾の今回は、地下1階から地上4階までのウィメンズフロアと9階・10階で内装や売場の変更を実施。地下1階にギフト/ベビーギフト/ブライダルサービスを集約し、1階はバッグ/ジュエリー、2階とシューズコーナーを移設した3階にはコンテンポラリーアイテム、4階にはデザイナーズコレクションを拡充させ、上層階2フロアには上位顧客向けに接客する「パーソナルショッピングスペース(VIPフロア)」を新設した。

伊勢丹との資本関係は2006年に解消したが、リニューアルオープン日を伊勢丹新宿店と合わせることで両店の相乗効果を狙う。今秋にはメンズフロアの改装も予定し、年間の店舗売上2桁増を目指している。

両店舗のリニューアルオープンの翌日には新宿東南口の商業施設「Flags(フラッグス)」が、2~3階を全面改装してリニューアルオープンした。地下1階の「Gap(ギャップ)」から地上10階の「Tower Records(タワーレコード)」まで計11フロアで構成されている「Flags」は、2階と3階部分をサザビーリーグ傘下の店舗が占めている。

改装では、「Afternoon Tea」の新業態である「Fusion of Old & New」をテーマに伝統的なものと現代的なものをアレンジする上質な毎日を提案するライフスタイルショップ「Afternoon Tea LIVING ReMIX(アフタヌーンティー・リビング リミックス)」の1号店や、コンセプトショップ「bijiness by Sazaby(ビジンネス バイ サザビー)」などが新たに展開される。

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改装された2階フロアでは、店内の装飾を大きく変化し、モロッコテイストを使ったインテリアとなった「AMERICAN RAG CIE」をはじめ、店内を南仏の海岸リゾート地をイメージし、allurevilleとLoulouWilloughbyのオリジナル2ブランドと国内外から買い付けたアイテムを豊富に取り揃えている「allureville」。そして、新たに店内にPOP UPスペースを設け、3~4週間のタームでブランドや、カルチャーにフォーカスしたエキシビションや展示販売を行う「And A」では、L字型のインショップを展開し、リニューアルと同時に2013年に25周年を迎えるシアトルの音楽レーベル「Sub Pop(サブ・ポップ)」にフォーカスしたエキシビションを開催する。

また、3階フロアでは、「MODERUN WORK STYLE」をキーワードに男性に向けた小物を展開する「SAZABY」がオープン。その他にも、デザイン・ディレクターの藤原大氏がデザインを手がける「CAMPER」、待望の新ブランド1号店「ELFORBR」、ヴィンテージジュエリーなどの1点ものや、国内外を問わず買い付けたデザイナーものなどを中心に、ストーリーを持つジュエリーで商品を構成している「agete」、マルシェを連想させる内装にリニューアルした「NOJESS」などが新たにオープンした。

新宿駅に直結する「ルミネエスト新宿」と「ルミネ新宿」では、2月末から4月上旬にかけて新ブランド1号店や新業態、関東1号店など話題の店舗を導入、また、南口エリアでは新宿高島屋が新たに金曜日の営業時間を30分延長し、土曜日と同様の午後8時半まで営業することで、帰宅前の夜間利用客を取り込む構えである。

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これは、3月16日から始まる東急東横線・東京メトロ副都心線相互直通運転を前に、各企業の集客合戦戦略と言える。伊勢丹新宿店は、直結する新宿三丁目駅の乗降客数は相互乗り入れの開始によって120%弱増加すると見込まれ、横浜方面からの来店も期待されるため、4月から田園調布エリアをはじめ東横線沿線にチラシを投入するなど商圏の拡大を図る。

現在工事中の南口前には、JR東日本が2016年春の完成を目処に地下2階地上33階の複合施設「新宿駅新南口ビル(仮称) 」の建設を進めている。1階~5階の商業施設部分は「ルミネ」が運営し、新宿エリアに求められるライフスタイル提案の店舗を集積するという。

また、南口周辺の回遊性を向上させると同時に東口と西口の行来を可能にする「新宿駅東西自由通路」の計画も進行中。JR東日本は各出口をつなげ、エリアを一体化することで「周辺施設との相乗効果による街の活性化に取り組んでいく」としており、交流拠点の整備と新たなランドマークの完成に向けて新宿エリアの集客合戦がさらに加熱しそうな勢いだ。