Touch the Heartstrings

心の琴線に触れる森羅万象を日々書き綴る「Touch the Heartstrings」

細雪

細雪(ささめゆき)」は、谷崎潤一郎の全編の会話が船場言葉で書かれた長編小説である。上流の大阪人の生活を描き、絢爛でありながら、それゆえに第二次世界大戦前の崩壊寸前の滅びの美を内包し、挽歌的切なさをも醸しだす。阪神間モダニズム時代の阪神間での生活文化を描いた作品としても知られている。ちなみに、舞台は阪神間だが、本質的には大阪の船場文化の崩壊過程が描かれている。

谷崎は第二次世界大戦中の1942年秋に山梨県河口湖畔に滞在し、月刊誌「中央公論」で「細雪」の執筆を始めた。夫人の松子、義姉、義妹たち四姉妹の生活を題材にした大作だが、1943年に軍部から「内容が戦時にそぐわない」として掲載を止められた。

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1944年には私家版の上巻を作り、友人や知人に配ったりしていたが、それも軍により印刷・配布を禁止される。そして、疎開を経て、戦後は京都鴨川べりに住まいを移し、1948年に作品を完成させた。

その後、「細雪」は評価され、谷崎は毎日出版文化賞や朝日文化賞を受賞。また、作家の三島由紀夫をはじめ、「細雪」は作家たちにより多くの文芸随想等で幾度か取り上げられ高く評価されや。読書アンケートや名著選でも必ず近代文学の代表作に挙げられる名作である。

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