Touch the Heartstrings

心の琴線に触れる森羅万象を日々書き綴る「Touch the Heartstrings」

KISSA

古き佳き時代、青山の街を素足にサボや下駄でカラコロと音を響かせて活歩している姿が、多くの人達の脳裏に色濃く残っているかも知れない。

また、夢のようなファンタジックなパンプス、雑誌で話題になったカラフルなポックリ、バイクに乗るために作ったライダーブーツ、海で過ごすためのビーチサンダル、そして幼いころ磨いていた父の靴の記憶をとどめたマニッシュシューズ。日本を代表するシューズデザイナーの高田喜佐が41年間に世に送り出した靴は、彼女の生き方そのものとも言える。

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1941年に東京の下町に生まれた彼女は、多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業後の1966年に初の個展「靴のファンタジー」を銀座の画廊で開催し、オリジナルブランド「KISSA」でシューズ・デザイナーとして出発した。70年代にはポックリとファッション・ズック、マニッシュなカジュアルシューズを発表し、1977年に「株式会社キサ」を設立、その後、青山に「ブティックKISSA」をオープン。日本の女性靴にデザインの概念を持ち込んだと評価され、以後、靴デザイナーの草分け的存在となる。機能美と遊び心が融合した大人のためのカジュアルシューズは多くのファンに支持され続けている。

また、シューズデザイナーとして活躍する一方で、詩人の高田敏子を母に持つ彼女はエッセイストとしても活躍した。シューズマガジン 「シューフィル」で「高田喜佐のくつろぎKISSA ROOM」を連載、そして、「大地にKISSを」「靴を探しに」「裸足の旅は終らない」「暮らしに生かす江戸の粋」など、多数の著書がある。

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マニッシュなカジュアルシューズやファッション・ズックなどで注目を集めた高田喜佐は、その斬新な作品から海外の影響を色濃く受けているように思われているが、彼女は生粋の下町っこ。洒落者の父、詩人の母、そして、6歳のときから日本舞踊を習ったという環境の中で、おそらく彼女は江戸時代から脈々と伝わる職人気質や技術力に心打たれたに違いない。デザインだけに頼らない、しっかりとした実用に耐える「靴」を作り続けてきた「こだわり」も、このような原点があればこそだと推測される。

彼女は40代になって、自分の中の「和」の世界を素直に認められるようになったという。歌舞伎を愛し、文楽を愛し、かなりの着物フリークにもなった。そして、「靴屋さんなのに、下駄が好きです」と堂々と口にし、草履とクロスオーバーさせたユニークなサンダルも発表している。

そんな高田喜佐にスポットを当てた展覧会「SHOES DESIGNER 高田喜佐 ザ・シューズ展」が、神戸ファッション美術館で4月18日から開催される。2006年に64歳で亡くなるまでの41年間にわたり発表されたシューズを通じ、クリエーションの軌跡や多彩なライフスタイルが紹介される。

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「靴はファンタジー」と唱え、日本の女性靴にデザインの概念を持ち込んだ高田喜佐の貴重なシューズの数々と共に、デザイン画、写真や映像などが没後約7年の時を経て展示される。また、2月には展覧会と同名の書籍が刊行され、会期中には弟の高田邦雄やクリエイティブ・ディレクター小池一子、スタイリストの原由美子らデザイナーとゆかりある著名人によるトークショーが予定されている。ちなみに、会期は7月2日まで。

なお、神戸ファッション美術館では、同時開催として歴代のファースト・レディや多くのハリウッド女優、1000人にも及ぶニューヨークセレブなどを顧客に持つアメリカを代表するオートクチュール・デザイナーアーノルド・スカージにフォーカスした「アーノルド・スカージ展 アメリカのオートクチュール・デザイナー」展も開催される。

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アーノルド・スカージは1930年にカナダ生まれ、パリ・クチュール組合の学校を卒業後、1952年から2年間ニューヨークのチャールズ・ジェームズのもとでアシスタントとして働く。1956年に自分のブランドを設立し、64年、オートクチュール・サロンを開業。60年代から70年代にかけて、バーブラ・ストライサンドの衣装を公私にわたって担当したことでも有名。華やかな色彩と模様が特徴で、歴代大統領夫人のドレスを手掛けるなど、比類なきアメリカのクチュリエである。

この展示会は名古屋ボストン美術館ボストン美術館の尽力により、ボストン在住のシャーフ夫妻より21点の貴重な作品が寄贈されたことを記念し、スカージが描き出す、ヨーロッパ・モードと異なるダイナミックなアメリカ・オートクチュールの世界が紹介される。

2人の偉大なデザイナーの足跡を辿り、感性に刺激を与えよう。

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