Touch the Heartstrings

心の琴線に触れる森羅万象を日々書き綴る「Touch the Heartstrings」

フェンディ

1964年に海外渡航が自由化され、この年には3万人弱だった海外渡航者の数は、71年には96万人と7倍増。71年にドルが固定相場制から変動相場制へとシフトし、1ドル360円が308円と円高になったことも、海外旅行客の増加を後押しした。海外旅行の楽しみの1つであるショッピングに円高は有利に働く。次々に発行される一流品のガイドブックを手に、円高のメリットを駆使し、日本人は海外旅行先で買い物に走った。

72年にドルの持ち出しが自由化されると、海外渡航者の数はさらに増え、75年の渡航者数は247万人に達した。そして、外貨減らしを進める政府の方針が日本人の海外ショッピング熱をさらに煽った。同じ年には並行輸入も解禁になり、輸入総代理店を通さずに誰でも自由に外国製品を輸入できるようになった。

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喜んだのは輸入業者。海外で外国製品を大量に買いつけ、日本に持ち込んだ。もっとも、多くの一流ブランドは卸売をしていないため、輸入業者は現地の小売値で買うしかなかった。そうなると、どうしても日本での小売価格は高くなるが、それでは総代理店経由の商品価格とあまり差が出ず、消費者に「並行輸入商品のメリット」を打ち出すことは難しい。そこで輸入業者が取った手段は沢山売りさばくことで利益を見込む「薄利多売」策。

こうして、ブランド品は街にあふれ、一気に大衆化した。当然、ブランド品の人気に目をつけた姑息な業者がコピー商品を市場に投入し、社会問題にもなった。これが海外ブランドの第一次ブームと言われる現象である。

貿易統計によれば、71年から74年にかけての3年間で、フランスからの輸入額は、衣料品や毛皮、アクセサリーは10倍以上に、革製衣料、バッグ、香水、化粧品は5倍以上に急増。物凄い勢いで輸入製品が日本市場を埋め尽くしていった。そして、数々のブランド品は、すさまじい勢いで大衆のあいだに浸透していった。

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世界の一流品と呼ばれるブランドは、品質がいいから、あるいはデザインが美しいから買われるのではなく、人が持っているから自分も欲しいという動機で購入されることが多かった。つまり、高度経済成長時代を背景に実施された貿易の自由化、外貨の持ち出し制限撤廃、並行輸入の解禁は、熱狂的なブランドブームを作り上げ、世界の一流品は高度経済成長時代の落とし子とも言える存在となった。

そんな当時の私の第一次バカポン時代に、ブランドバッグなどをけっこう買ってしまった忌まわしい記憶が思い出される。グッチのボストンバッグ、ハンティングワールドのショルダーバッグ、ヴィトンやカルティエ、セリーヌやフェンディ…など、まだまだキリがない。

そして、カジュアルな装いにコーディネートしやすかったバッグが、フェンディの「F」を組み合わせた「ダブルFモノグラム」の「ズッカ柄」バッグだった。当時はバッグブランドと思い込んでいたフェンディだが、本来はイタリアを代表する高級毛皮製品を取り扱う服飾品ブランドだということを知ったのはかなり後のこと。

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アドーレ&エドアルド・フェンディ夫婦が1925年にローマで皮革製品を扱う店を創業し、染色した毛皮や高度なカット技術が評価され、多くの著名人に愛されてきたフェンディ。1965年には、当時はまだ27歳の新進デザイナーだったカール・ラガーフェルドを主任デザイナーに擁立し、飛躍的な革新を遂げた。

バッグでは「ダブルFモノグラム」以外に、ローマの伝統的な馬具に使用される貴重な革「キュリオ・フィオレ」を使用した「SELLERIA(セレリア)」、1997年発表の「BAGUETTE(バゲット)」、2005年発表の「spy(スパイ)」が世界的な大ヒットとなった。

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創業以来受け継がれてきた「ART&CRAFT」を集大成し、デザインの美しさとイタリアの伝統的なクラフツマンシップのもつ世界観を表現することを目的に、巡回展「FENDI-UN ART AUTRE Another Kind of Art, Creation and Innovation in Craftsmanship ~フェンディもうひとつのアート、クリエイションとイノベーションの軌跡~」が企画された。そして、世界に先駆け日本で初開催されることになった。

美術史家であり、美術評論家としてもイタリア国内外で活躍するエマニュエラ・ノビーレ・ミーノ監修により、東京藝術大学大学美術館で開催される。あえて時系列ではなく「クリエイション」と「イノベーション」の観点から構成され、エントランスでは、1925年ローマのプレビシート通りに誕生したフェンディ1号店のファサードが再現される。

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ブランドの歴史やファークリエイションにおける進化の過程などを映し出した映像を中心としたイントロ室では、各作品の詳細な情報や映像資料がサイドラベルの他、壁のタッチスクリーンやウェブアプリでも提供され、1960年代半ばから今日に至るまでの様々な進化の過程を視覚と触感で体験できる。

展示室に入ると、1970年~今年にかけて製作した代表的な作品約30点が真鍮製の半円形モジュラー式ディスプレーに、ファーが1点づつ、実際に使用された構図タブレットやスケッチなどのアーカイブと共に展示されている。展示室に続くセクションにはファーアトリエ(公開工房)が設置され、会期中は職人が常駐し卓越した職人技が披露されるという。ウェアの創作・制作の過程に焦点があてられ、舞台裏の魔法が垣間見える。

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美的感覚と知的好奇心が刺激される3つの展示スペースは、まさにフェンディのもう1つのアートの世界を五感で楽しめる空間である。

余談ながら、去年、フェンディとマセラティのコラボ特別限定車「マセラティ グランカブリオ フェンディ」が登場。4シーター・コンバーチブルの「グランカブリオ」を、シルヴィア・フェンディが「FENDI」の独自仕様にデザインし、全生産台数50台のうち日本では2台が販売された。

特別限定車は、クラフツマンシップと伝統という点で同じ価値観を共有するイタリア2大ブランドのコラボレーションによって生み出された最高峰モデル。最新テクノロジーと、高い手作業の技術力が融合されて誕生。全50台は全てモデナのマセラティ本社工場内で生産。ダッシュボード、ドア内側、シフトレバーには、「FENDI」伝統のイエローカラーのウッドトリム「ペルガメーナ フェンディ」を採用。「FENDI」のブランドロゴ「ダブルF」は、レザーシートのステッチやアロイホイールの中央にあしらわれ、イドシルのドアエントリーガードには刻印されている。また、「FENDI」定番コレクション「セレリア」の最高級レザー「クオイオ ロマーノ」をシフトレバーブーツとインスツルメントパネルカバーなどに使用。「FENDI」の世界観が随所に取り入れられている。

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シルヴィア・フェンディは、このモデルのためにロゴマークを特別にデザイン。「Maserati」のロゴ「トライデント」のエッチングと「FENDI」のロゴ、「FENDI」にとって象徴的な数字「5」桁の数字をモチーフに、楕円形のシルバーバッジを製作した。パッセンジャーシート前のダッシュボードと、ブラックのソフトトップの両サイドに施され、「マセラティ グランカブリオ フェンディ」ならではの存在感を示している。

この特別限定車を購入できた方はラッキーと言えるが、26,393,000円と引き換えである。しかし、実にカッコいいクルマだ。

※動画はこちらからご覧いただけます。

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