Touch the Heartstrings

心の琴線に触れる森羅万象を日々書き綴る「Touch the Heartstrings」

カイ・ボイスン(Kay bojesen)

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この写真のモンキーを今までに一度でも見たという人は多いはず。1951年の発表以来、子供から大人まで世界中の人に愛され続けているカイ・ボイスンの木製玩具である。

デンマーク人のカイ・ボイスン(Kay bojesen)は、ジョージ・ジェンセンの元で修行を積み、1910年に銀細工師としてキャリアをスタートし、1938年にデザイン発表されたスプーンやフォークなどのカトラリーがデンマークで大ヒットしたデザイナー。その後、デンマーク王室、大使館御用達のカトラリーとなり世界中でベストセラーになる。1951年にはカトラリーが「ミラノGrand Prix」で最優秀賞を受賞。

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そして、同年の1951年に制作されたのが木製玩具「モンキー」。サルの表情や動きを見事に捉え、円形、直線、ひょうたん型などの分かりやすい形でデフォルメされた姿は、見れば見るほど愛らしく、木の温もりと共に心を癒してくれる。

飾り物や玩具のイメージが強いこの「モンキー」、もともとは子供家具の見本市のために「フック」をデザインして欲しいと依頼を受けたカイ・ボイスンが、ハンガーに手のとどかない子供でも服がかけられるよう大人用のハンガーにぶら下げ、より低い位置で子供たちが物をかけられるようにと、この「モンキー」をデザインしたという。

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単に飾る目的でぶら下げられるようになっていると思っていた両手両足は、実は「フック」としてコートや帽子をかけられることを前提にデザインされている。しかしながら、今は玩具として販売されているので、フックとしての機能的な使い方は、製品の強度的にあまりお勧めできないのが悲しいところ。

しかし、この「モンキー」、稼動範囲は大きい。首、肩、股関節、手首、足首、全9箇所が360°動くかなり優秀なアクションフィギュアに仕上がっている。そして、手にとって遊べるというのが「モンキー」のいいところ。肩、股関節は太めのゴムで接合されているため柔軟性があり、子供の手荒い扱いにも多少なら音を上げることはない。また、塗装はオイル仕上げ。口にしても害のないものを使用しているのでこの点も安心だ。

「モンキー」の他にも、クマ、ゾウ、木馬など、いろいろな動物がデザインされ販売されてきた。ちなみに、人気の高さから、日本やアメリカなどでは微妙に雰囲気の似た偽物の木製モンキーまで発売されていた。カイ・ボイスンデザインのヴィンテージの木製玩具は大変人気が高く、1990年代に入り復刻が開始され、現在でもローゼンダール社より現行品が発売されており、デンマーク木製玩具の代名詞として世界中の子供達に愛され続けている。

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また、この「モンキー」が主役を演じるストーリー仕立ての写真集「EVENTYRET OM ABE」が存在する。もちろん、モンキーだけではなく、カイ・ボイスンデザインのクマ、ダックスフンド、ゾウ、シマウマ、ペンギンなど、色々な動物が登場している。

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熱狂的なカイ・ボイスンマニアが写真集の製作者だという。レアな動物達も多数登場するこの写真集、ひじょうに人気のあった写真集だったこともあり、最近ではなかなか入手困難な一冊。ファン垂涎の写真集である。

そして、1950年にデザインした幻の小鳥たち「Songbird(ソングバード)」シリーズが復刻された。これらはカイ・ボイスンの遺族が大切にしていた古いアルバムの中から、デザインされたまま一度も生産されていなかったカラフルな小鳥たちを発見し、半世紀以上の時を超え商品化が実現したものだ。

ソングバードシリーズは、カイ・ボイスンが生前に暮らしていたコペンハーゲン北部の自宅の庭に集まる小鳥たちからインスピレーションを得てデザインされたといわれている。発表された6つのカラーバリエーションによる小鳥たちは、すべて職人によるハンドメイド。カイ・ボイスンに敬意を表し、彼自身や家族の名前が付けられている。

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「KAY(カイ)」は、ブルーの濃淡の組み合わせで、カイ・ボイスン本人の名前から名付けらた。「Peter(ピーター)」は、赤頭・黒くちばし・黒ボディのエレガントな組合せでカイの孫の名前。「Ruth(ルット)」は、赤頭・黄くちばし・ピンクボディのフェミニンな組合せで、名前はカイの義理娘。「Otto(オットー)」は、赤頭・黒くちばし・ライトシルバーボディで、カイの唯一の息子の名前。「Pop(ポップ)」は、緑頭・黒くちばし・オレンジボディで、カイのニックネーム。ちなみに、彼は禁酒家でソーダばかり飲んでいたのでソーダ・ポップと呼ばれていた。そして、「Sunshine(サンシャイン)」は、黄緑頭・緑くちばし・ライトブルーボディで、カラーはオリジナル作品の色調を再現している。

こういう、ほんわかとした置物を身近に置けば、きっと心も穏やかになるだろう…。