フォション（FAUCHON）

アップルティーが有名な「フォション（FAUCHON）」を紅茶専門ブランドだと思っている人も多い。ところが、本国フランスでは世界中の美食家たちに愛され続ける高級食料品店の代名詞。

1885年にオーギュスト・フェリックス・フォションが、パリ・オペラ座近くのマドレーヌ広場にあるマルシェに旬の野菜や果実を車で運ぶ商売を始め、翌年小さな食料品専門店をオープンたことから「フォション」の歴史は始まった。

高級フルーツや高級野菜などの販売で注目されたフォションは、ビスケットやブイヨンなど、当時としては画期的な商品も取り扱い、その後も、80万本を揃えたワインセラーやパティスリー、グラン・サロン・ド・テなどをオープンし、有名となっていった。

高品質を提供するフォションは、またたく間に高級食料品店の代名詞となり、多くの政治家や文化人、映画俳優、高級ホテルなどからの注文が絶えないブランドとなり、フォションの名声は世界へと広まった｡

1960年にフォションは果物のフレーバーティーを、その10年後には花びらのフレーバーティーを開発。日本では1960年代後半に発売されたアップルティーが大ヒット。その後、日本でもフォションのショップが次々にオープンし、食料品、コンフィズリー、パティスリーをはじめとする「フォション」ファンを獲得した。

フォションは、フランスの「ガストロノミー（美食学）」の伝統を受け継ぐとともに、創業以来、常に新しいものを追い求め、そのテーマは「美味しく、美しく～Le Bon et le Beau～」。創業100年以上の伝統の味とレシピを守るだけでなく、ファッション業界のように新しい食品をシーズンごとに発表し注目を集めている。

また、フォションは「この店でしか手に入らない良質な品物のみを取り扱うこと」「あらゆるグルメの好みに対応すること」をポリシーとすることで厚い信頼を集め、フォションブランドは世界中の美食家たちに愛され続けている。

こけら落とし公演初日を4月2日に控え、先日も歌舞伎俳優ら約210人が真新しい舞台に勢ぞろいし「古式顔寄せ手打式」が行われたばかりの歌舞伎座リニューアルを記念し、フォションから表面は歌舞伎座の定式幕をモチーフとした黒、柿、萌黄のデザインで、シュー生地の中はゆずクリームと抹茶クリームが詰まった「エクレールカブキ（Eclair KABUKI）」が登場した。

歌舞伎座タワー地下2階「木挽町広場」に4月7日までの期間限定で出店中の「フォションモバイルブティック」のみで取り扱われ、発売2日目の25日には1時間で完売したという。ちなみに、2009年夏季限定エクレアとして登場した葛飾北斎の富嶽三十六景を模した「波」をモチーフとした斬新なデザインの美しいエクレア「ラ・ヴァーグ」も販売されている。

また、春を告げる桜の季節にぴったりのガーリーなピンク色をした春のパンも販売を開始した。桜の五弁の花びらをそのまま形にしたインパクトある桜ブレッドは、その名も「フルール・ド・サクラ」。桜の花の塩漬けがほのかなルヴァン生地の甘みを引き立てた上品な味わいのなかに、生地に練りこんである刻んだドライチェリーやホワイトチョコレートチップが、新鮮なアクセントとなり、春の賑やかな喜びを口の中に運んでくれる。

フォションのパンは、フランスの産地にこだわった小麦を使い、また、スイーツでは季節ごとのフルーツを使うなど、フランス各地で育まれる豊かな食材をふんだんに取り入れ、美食の国フランスならではの味を世界中に届けている。これまでもフォションのパンは、ユニークなデザインブレッドで、見た目にも美味しい商品として度々話題になった。ハリウッド女優のセクシーな唇をモチーフにした「唇形ブレッド」の「クリスマスキッス」や、虎の縞模様のようなカラフルなストライプが目を引く「クロワッサン・ティグレ」など、いかにもパリ発ブランドらしいファッション性あふれるパンが多い。

そして、「フルール・ド・サクラ」だけでなく、フォションには桜の花を用いたいくつかの商品がある。たとえば、フォションが日本登場40年を迎えた際にそれを記念して作ったジャム2種「ペリゴール産ストロベリージャム」や「アルザス産ブラックチェリージャム」には、日本へのオマージュとして桜の花が入っている。

商品開発者によると、「フルール・ド・サクラ」はフォションのベリー系のジャムと合わせて食べるのがベストだという。地域によってはお花見の季節も終わりそうだが、爽やかなロゼ・シャンパンとのマリアージュも楽しめ、花びら部分を手でちぎって小分けにできるので、花見はもちろんのこと、春の行楽や自宅でのホームパーティなど大勢で楽しむシチュエーションでは春らしい華やかな彩りを添えてくれるアイテムになるはずだ。