Touch the Heartstrings

心の琴線に触れる森羅万象を日々書き綴る「Touch the Heartstrings」

相棒シリーズ X DAY

好きなドラマは?と尋ねられたら、すかさず「相棒」と答えるほど、昔からの「相棒」ファンである。杉下右京というキャラクターを中心に、一癖も二癖もあるユニークなキャラクター陣が脇を固め、ストーリーも社会派サスペンスとしての味付けが濃い。

これまでの刑事警察ドラマではあまり扱ってこなかった社会問題を先駆的、積極的に取り入れてきたことは、「相棒」の世界観に他作品にはない広がりと深みをもたらしてきた。政治や警察や検察の腐敗、マスメディアの暴走、裁判員制度、時効の法改正、冤罪、環境・公害問題、臓器移植、基地問題、学校裏サイトワーキングプア生活保護…、ちょっと思い出しただけでもエピソードは多い。

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2000年に土曜ワイド劇場枠で単発ドラマとして放送され、2002年10月より連続ドラマとしてシリーズ放送されて以来、10年以上にわたり圧倒的な高視聴率を維持し、もはや国民的ドラマとも言える「相棒」シリーズ。映画界においても、2008年に「相棒-劇場版-絶対絶命!42,195km東京ビックシティマラソン」、2009年の「相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿」、そして、2011年「相棒-劇場版II-警視庁占拠!特命係の一番長い夜」と、劇場公開する度にヒットを記録し、唯一無二のモンスターコンテンツとして不動の地位を確立している。

そして、2012年からテレビドラマ「相棒」は「season11」に突入。甲斐享という新たな「相棒」が登場し、更なるステージへ進化し続ける中、2013年に待望の映画最新作が登場。今作も「相棒」の真骨頂とも言える社会派サスペンスがベースとなっている。そして、今回描かれているのはタイムリーな社会的トピックだが、エンターテインメント作品として仕上げる上では非常にハードルが高そうにも思える「金融問題」。

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シリーズ4作目の劇場版は「米沢守の事件簿」同様に特命係はゲスト扱いのスピンオフ作品。しかし、本来の「相棒」の世界観の中でストーリーが展開する。普段は天才・杉下右京の影に隠れ、存在感も薄い「トリオ・ザ・捜一」のリーダー格である伊丹憲一と警視庁サイバー犯罪対策課専門捜査官の岩月が「相棒」となり、巨悪に挑む。映画公開前の「season11」では、サイバー犯罪対策課の岩月を登場させ、映画版のエピソードをチラッと紹介するシークエンスは芸が細かい演出である。

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経済犯罪が専門の捜査二課に在籍歴を持つ杉下右京にとっては、本来「金融問題」事件自体は大好物のジャンルであるが、残念ながら右京は休暇でロンドン滞在中。ちなみに、今回の事件は「season10」終了後に発生したという設定らしい。そして、ロンドンから帰る途中に、競馬を楽しみに立ち寄った香港で三代目「相棒」となる甲斐享と出会い「season11」へと繋がっていくという時系列のようだ。

今回の作品では、「相棒」シリーズファンにとって大きな見どころの1つとなるのが、「相棒」を支えてきた多くのキャラクター陣がこれまであまり見せなかった勇姿?である。彼らも日本警察のトップである警視庁に所属しており、実はけっこう優秀なのだ。これまでは右京の存在があまりにも偉大すぎるため、各々の活躍が目立ってなかったにすぎない…ということだろう。

「暇か?」の迷セリフでお馴染みの角田課長はいつもは右京に調べものばかり頼まれているが、この作品ではなかなかの剛腕と策士ぶりを発揮している。彼の本職はれっきとした組対五課の課長だから、これが本来の実力なのだろう。大河内監察官とのコンビもいい味を醸し出している。

ドラマではいつも女性にフラれる情けない陣川警部補も、本職の経理業務では凛々しい姿を披露する。そして、捜査会議で淡々と証拠について解説する鑑識の米沢も頼もしい。現場時代に腕を鳴らしたのであろう中園参事官の容疑者取り調べや、その上司である内村部長ですらも新たな一面を見せている。また、「花の里」の二代目女将である月本幸子も登場し、「相棒」ファンを喜ばしてくれる。

また、「season4」からの準レギュラーである片山雛子の暗躍ぶりも見逃せない。出演するごとに地位を上げ、今回の作品では総理補佐官にまでなっている。事件に関連する法案を巡っては、警察庁に戻った神戸尊を上手く利用して情報収集に励み、いつもながら自分の思う通りに事を運んでいく。今後も彼女は「相棒」シリーズの節々に登場するユニークなキャラクターとして存在感を示すに違いない。

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日本の借金残高は完全な危険水域。日本経済はいつ崩壊してもおかしくない状態なのに、国民に危機意識は希薄である。そればかりか、政府は震災復興財源に更なる補正予算案を通し、そのツケを子孫に回す。さらに、アベノミクスのミニバブルに踊り始め、庶民は現実から目をそらす。今回の作品は、そんな日本にとどめを刺す衝撃のシナリオを暴露した男が殺された事件から起こる、警察内部のセクショナリズムと一刑事の正義の限界が描かれている。

謎のデータをネット上に投稿していた容疑者を追っていたサイバー犯罪捜査官の岩月は、その容疑者が他殺体で発見された銀行のシステム開発者と知り、殺人事件の捜査担当の伊丹とコンビを組むことになってしまう。クールな岩月の態度に、「熱い」伊丹は苛立ちを隠せない。殺人事件として真実を追う伊丹と不正アクセス容疑を追う岩月は、互いにいがみ合いぶつかり合いながらも事件の真相に迫っていくが、事件を追えば追うほど目に見えない圧力によって捜査が封じられていく。しかし、共闘し、絆を深める展開は刑事ドラマのバディムービーの王道そのもの。また、現場と権力側との軋轢もお約束通り。

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謎のデータの裏に蠢く政官財の巨大な権力構造と浮かび上がる金融封鎖計画の存在。日本国債破綻を予告したレポートの「X-DAY」を巡り、緊迫した展開が繰り広げられる。殺人事件は意外な形で解決するが、その闇に潜む日本の権力者たちの思惑には背筋が凍る。

スピンオフ作品とはいえ「相棒」シリーズオールスターキャスト布陣は豪華である。そして、少ないながらも杉下右京の登場シーンにはホッとする。そして、二代目相棒との電話でのやり取りには思わずニヤリとしてしまう。そうなると、前作で殉職した小野田官房長が登場しないのは実に寂しいものだ。右京との回転ずし屋での数々の掛け合いは、今では懐かしい思い出だ。

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個人的に注目するキャストは、「season11」でも登場した警視庁サイバー犯罪対策課専門捜査官・小田切亜紀役の関めぐみ。先日まで放映されていた「ドラマチック・サンデー dinner」でシェフの武藤はづきを演じていた女優である。何となくだが、チョイとブレイクしそうな予感がする。

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余談ながら、今回の作品では証拠品の照合から上司への報告・説明、関係者への聞き込みなどのあらゆる場面でタブレット端末が大活躍するが、上着からタブレット端末を取り出す岩月の内ポケットって一体どうなっているのだろうと、少々興味を持った観客も多いのではないだろうか。

異色の相棒が活躍する相棒シリーズ「X DAY」。杉下右京のいない「相棒」ワールドもなかなか面白いものである。「相棒」には濃いキャラクターが揃っているだけに、今後も新しいスピンオフ作品が誕生するかも知れない。やはり「相棒」から目を離せない。

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